原発問題への懸念のためアンナ・ネトレプコらが来日を断念

2011/06/01
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ピーター・ゲルブ メトロポリタン・オペラ総裁が都内で緊急記者会見

ピーター・ゲルブ メトロポリタン・オペラ総裁 photo:M.Terashi


 6月4日に開幕するメトロポリタン・オペラ(MET) JAPAN TOUR 2011で上演される《ラ・ボエーム》に出演予定だったアンナ・ネトレプコ、ジョセフ・カレーヤが降板することがわかった。5月31日、ピーター・ゲルブ総裁が都内で緊急記者会見を開き、明らかにした。
 すでに、指揮者ジェイムズ・レヴァインが病気のため降板、ファビオ・ルイジへの変更がアナウンスされていたほか、《ドン・カルロ》に出演予定だったオルガ・ボロディナが喉の不調による二ヶ月間の要休養との医師の診断により日本公演への出演を降板、ヨナス・カウフマンは、地震及び原発問題への懸念のため来日を断念していたが、アンナ・ネトレプコ、ジョセフ・カレーヤの降板に伴い、《ドン・カルロ》《ランメルモールのルチア》のキャストも変更となった。

 ゲルブ総裁によると、チェルノブイリ原発の事故を経験したネトレプコは「親戚や友人の多くが、ガンを発症してしまった。飛行機に乗るという段になってそのことが脳裏を過ぎり、仮に日本に来たとしても、そのことが気がかりのままでは自分のベストな歌を聴かせられない。日本のファンを落胆させたくない」との思いから、来日しないことを決断したという。
 これについてゲルブ総裁は「コロンビア大学のデイヴィッド・ブレナー博士から日本の放射線濃度の推移、現在の東京の濃度などについて説明をうけ、安全であることを確認した。しかし、いまだにニュースや新聞などで曖昧な報道がなされているのも事実で、そうしたことから日本に行くことに不安を感じ、神経質になる歌手達がいても不思議ではない。今回、ネトレプコらの決断がギリギリまで遅くなったのも、いかに彼女らが日本に行きたいという思いが強かったのか、みな自分自身のなかで葛藤し苦しんだ」と理解を示した。

 ゲルブ総裁は今回のキャスト変更について「ネトレプコをはじめ、多くのスターが来日しないことで日本のファンは落胆しているかもしれないが、代わりに多くの新たなスターたちに出会える」とし「世界最高の舞台を実現するMETの威信にかけ、この48時間、世界中のスター歌手達にコンタクトをとりつづけた。2人のスターを失うことになったが、代わりに4人のトップクラスの歌手を揃えることができた。彼らは、いまの日本の状況をふまえたうえで、ぜひ参加したいという熱意をもって来日を約束してくれた。ベストなキャストを揃えることができた。奇跡的にそろった歌手達で、最高のパフォーマンスを見せられる」と、日本公演成功への自信をのぞかせた。

 《ドン・カルロ》でエリザベッタを歌うマリーナ・ポプラフスカヤについては「次世代の新星、ダイナミックなスーパースターと言われている。昨シーズン、METで《ドン・カルロ》《椿姫》で主役を歌い、高い評価を得た。彼女は、本来ならフランスでビシュコフ指揮のもと歌う予定が入っていたが、ビシュコフに頼んで彼女をフランスの公演からはずしてもらった。ビシュコフからは、METの日本公演は世界が注目している重要なイベントであり全面的に協力すると、快く、即座にOKしてもらえた」と説明、《ランメルモールのルチア》に出演することになったロランド・ヴィラゾンについては「数年間、喉の問題で世界の大きな舞台から遠ざかっていたが、最近になってロイヤル・オペラでカムバックを遂げ、高く評価されている。今回の日本公演で歴史的なカムバックを遂げることになる」と語った。

 また、《ルチア》のタイトル・ロールを歌うディアナ・ダムラウについては「彼女も非常な葛藤のなかにいた。彼女は出産したばかりで、授乳中であることから、ドイツ国内でもいろいろな専門家からアドバイスを受けた。それでも日本が安全であると解釈し、最終的に自身で来日を決めた。赤ちゃんだけでなく、彼女の母親も一緒に来日する」ことを明らかにした。

 MET来日を決断したことについては「日本が安全である限り、来日を遂げようと思っていた。来日したのは正しかったと思っている」としたうえで、「震災後、大きなオペラ・カンパニーとしての来日は、私たちが初めてとなる。METは世界の文化組織のなかでも大きな責任をもつものだと認識している。世界中の芸術組織から注目の的となっていることも自覚している。来日を控えている多くのオペラハウスやオーケストラが来日すべきかどうか、検討している最中だと思うが、私たちが来日を決断したことが彼らにとっても大きな後押しとなる」と語った。

 最後に、日本のファンに対して「この来日公演を通じて、大きな惨事で被害を受けられた皆さんの気持ちを少しでも明るくできたらと願っている。日本には多くのオペラファンがいる。そうした方々に元気になっていただきたい。みなさんの生活のなかに普通に音楽があるという状況に、もう一歩近づけられるように、そのお手伝いをできればと強く願っている。オペラの多くは悲劇で、今回の3演目ともに悲劇だが、悲劇を通じてみなさんが生きていく上での糧になるような、希望が感じられると思っている。精一杯がんばりたい」とのメッセージを送った。

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【メトロポリタン・オペラ出演者変更のお知らせ】

【ピーター・ゲルブ総裁 緊急記者会見の模様(録画)】

【ピーター・ゲルブ総裁からのメッセージ】

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2 Responses to 原発問題への懸念のためアンナ・ネトレプコらが来日を断念

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