新日本フィルハーモニー交響楽団 2010-2011シーズン

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 若きシェフ、クリスティアン・アルミンクのもと、独自のプログラミングで話題をさらってきた新日本フィルが、来シーズンのプログラムを発表した。なかでも目を引くのが、指揮者陣だ。音楽監督のアルミンク以外の指揮者はたったの3人! しかしこれが凄い。 ダニエル・ハーディング、フランス・ブリュッヘン、インゴ・メッツマッハー。年間24公演のうちの半分をこの3人の指揮者が受け持つが、今シーズンから「Music Partner of NJP」の肩書きをもつこととなったハーディングが、うち6公演を指揮する。これはもう、ヨーロッパの一流楽団に比肩する強力な布陣と言える、画期的なものだ。

 これまで年間テーマを掲げ、テーマに添った曲目で私たちを楽しませてくれた新日本フィルだが、今度のシーズンはこれまでとちょっと違う。テーマを掲げる代わりに、新たな試みとして、少数精鋭の指揮者陣で挑む。これは、ともにすごす時間を多く取ることによって「選りすぐりの三人の指揮者をより深く知る機会」を届けたい、というアルミンクの思いから実現したものだ。

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新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ

 2003年の音楽監督就任から7年、すでに2012-13シーズンまで契約延長が決まったアルミンクが指揮するなかで最も注目すべき公演が、コンサート・オペラシリーズのワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》だ(#480)。2007年の《ローエングリン》の名演がまだ記憶に新しいが、アルミンクが満を持して”辿り着いた”《トリスタン》に否応なく期待がふくらむ。

 オープニングのヴェルディの大作《レクイエム》(#467)も楽しみだが、それ以上に楽しみなのが、ラドゥ・ルプーとの競演だ。抒情性豊かなピアニスト、ラドゥ・ルプーは前回”奇蹟の再来日”と言われながら体調不良による来日中止でファンをがっかりさせたが、今年ついに9年ぶりの来日が実現する。曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。究極のリリシズムに浸れるはずだ(#468)。

 マルティヌーの交響曲第3番(#476)は、ベートーヴェンの《英雄》交響曲をモデルにした”英雄的”な交響曲だ。ヤナーチェクを得意とするアルミンクがそれと同じくらい好きな作曲家だと公言するだけに、こちらも聴き逃せない。

ハーディングの若々しいブルックナー
 
来日のたびに強烈な印象を残していく俊英ハーディングは、マーラーの交響曲第5番(#474)とブルックナーの交響曲第8番(#478)という大作で再登場する。ハーディングのマーラーは聴くたびにその天才ぶりに驚かされるが、ブルックナーも悪くない。これまでになく現代的で明るいブルックナーに出会えるはずだ。

ようやく実現する、メッツマッハーとの出会い

 新日本フィルからの長年にわたるラブコールにようやく応えてくれたメッツマッハーは、20世紀から現代までの音楽を得意とし、革新的なプログラミングで注目を集める鬼才としてヨーロッパの楽壇で話題の指揮者だ。マーラーの交響曲第6番〈悲劇的〉(#469)は、サントリーホール・シリーズとつながる”悲劇”の6シリーズ。ここでもその才能を遺憾なく発揮する。

“あらゆる時を超えてもっとも偉大なる傑作”

 ハイドン・シリーズで聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ巨匠ブリュッヘンは、バッハのロ短調ミサ曲で再登場する(#473)。2011年には新日本フィルとのベートーヴェン交響曲全曲演奏会も予定されているが、「ベートーヴェンとバッハは2人の巨人、比類なき偉大な作曲家」と語るブリュッヘンが、全精力を傾けた超絶な名演になるであろうことは疑う余地もない。

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新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ

■アルミンクとソリストたちの競演

 サントリーホール・シリーズは、アルミンクが指揮するツェムリンスキーの《抒情交響曲》で幕を開ける(#466)。マーラーと同時代の作曲家がマーラーの《大地の歌》を意識しつつ創作し、のちに20世紀最大の作曲家のひとりアルバン・ベルクに名作《抒情組曲》を書かせるきっかけとなった、美しい作品だ。

 このシリーズで注目されるのがソリストとの共演だが、なかでもヴィオラのアントワン・タメスティの演奏するクルターク:ヴィオラ協奏曲(#477)に期待したい。いま、ヨーロッパの楽壇で引っ張りだこのフランスの気鋭だ。また、巨匠クラウディオ・アバドとの共演で世界的に有名になったヴァイオリンのイザベル・ファウストは、昨年リリースしたCD「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集」でその洗練された音楽性にさらに磨きをかけた。今回はブリテンの隠れた名作、ヴァイオリン協奏曲を披露する(#481)。

■メッツマッハーの悲劇

 メッツマッハーは、トリフォニーでのマーラーの〈悲劇的〉を前に、サントリーホールでは、ブラームスの《悲劇的序曲》に続き、チャイコフスキーの交響曲第6番〈悲愴〉。現代音楽を得意とするメッツマッハーの真骨頂が聴けるハルトマンの交響曲も第6番という、なんとも気が利いた絶妙なプログラミングだ(#469)。

■恍惚に浸る、ハーディングの”ハルサイ”と”ベト7″

 現代的で類い希なる音楽性を湛えたハーディングが指揮する《春の祭典》ほど胸躍らせるものがあるだろうか。ベルリン・フィル音楽監督のサイモン・ラトルに多大な影響を受けたハーディングがラトルを超える名演を聴かせてくれるかもしれないと思うと、落ち着いていられないのだ。しかもウェーベルンの〈6つの小品〉にベルリン・フィルの元コンサートマスター、コリヤ・ブラッハーとのベルクのヴァイオリン協奏曲と、20世紀の名曲を集めた豪華なプログラム(#475)。このほか、ベートーヴェンの交響曲第7番では、すべての聴衆を恍惚へと誘うだろう(#479)。

■ブリュッヘンが魅せる、芸術の極み

 2011年2月、ブリュッヘンは新日本フィルとのベートーヴェン交響曲全曲演奏に挑む。通常、コンサートの直前にリハーサルをするのが一般的だが、今回のプロジェクトでは、ブリュッヘンの指示により、9番からはじめて1番へと練習するという。ベートーヴェンをより深く知るためだ。その間、半月以上にも及ぶ。そして、本番前にはもう一度、当日に向けたリハーサルを演奏順に重ねる。こうして入念に準備をし敢行されたプロジェクトのあと、第8番と第9番〈合唱付き〉を再度、定期演奏会で披露する(#472)。「この世に存在した類い希なる作曲家の音楽を是非聴いてください」というブリュッヘンの、渾身のベートーヴェンだ。

*この記事は、株式会社エンタテインメントプラスの許諾のもと、e+CLASISIXから転載したものです

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