【レポート】レクチャー「トスカとローマをめぐる旅」

NISSAY OPERA 2019『トスカ』

 11月9日、日生劇場でNISSAY OPERA2019、オペラ《トスカ》が開幕する。演出は粟國淳、指揮は園田隆一郎。本公演を前に去る6月9日、両氏による『トスカとローマをめぐる旅』と題するレクチャーが行われた。

 粟國は2歳半からローマに住んでおり、園田もつい先頃帰国するまでの15年ほどをローマで過ごした。そんな二人が「ローマってどんな街?」に始まり、オペラ《トスカ》の原作であるヴィクトリアン・サルドゥの戯曲から見えてくる登場人物たちの人物像、初演のときの衣裳、オペラのなかの「劇場から教会までの、サンタンジェロ城から教会までの位置、距離感」をひもときながら解説した。

 なかでも、トスカの人物像について二人が熱く語ったので、その部分をご紹介しよう。

 園田「トスカはもちろんフィクションの人物ですが、第3幕で歌われる羊飼いと同じように、トスカも孤児で、ミサ曲などの宗教音楽などを歌っていたところ評判となり、その歌声を聴いた作曲家のチマローザがオペラで彼女に歌わせようとし、揉め事となった。けれども、彼女の歌を聴いた法王がいたく感激し『あなたが歌うことで人々が感動し涙する。そのことは神への祈りの道に通じる』と後押しし、スカラ座、サン・カルロ劇場、フェニーチェ座とその活躍の場を広げ、今はアルジェンティーナ劇場いる、ということが戯曲のなかでカヴァラドッシの口から語られる」
 粟國「トスカはマリア・カラスのようなディーヴァでありながら、そういう生い立ちであるからこそ、庶民的でもあり、ジェラシーもあり、熱い気持ちもあり、また、かわいらしさもある」
 園田「野性味もありますよね。カッとなったり嫉妬深くなったり。スカルピアも殺すし。でも教会に育てられて敬虔な信仰深い女性。だからこそ、『歌に生き、愛に生き』の歌があるわけだし、第1幕、舞台に登場するやすぐに聖母に花を手向ける」
 粟國「カヴァラドッシが寄ってきても『まずはマリア様にお祈りさせて』という台詞が出てくる。すごくわざとらしいけど、本当に神を信じている。第3幕、自分から飛び降りるけれども、自殺はカトリックでは最大の罪。自分もスカルピアと同罪になる。だからこそ、『おおスカルピア、神の御前で』と、どっちが間違っていたのか裁いてほしいと、この台詞で飛び降りる。《トスカ》というオペラの前提として、トスカの人物像はとても大事で、必ず稽古の時には話をしますが、こういうオペラのテキストにはない、バックグラウンドからドラマツルギーをつくっていかないと歌っている意味の真意が伝わらない」

 劇場と教会、サンタンジェロ城の位置関係、距離感については、次のような説明がなされた。
粟國「オペラのなかの中心となる場面、カヴァラドッシのいるサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会とトスカが歌っていたアルジェンティーナ劇場はとても近かった。幕間にカヴァラドッシに会いに行くのは可能な距離だった。
 一方、アンジェロッティがサンタンジェロ城からサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会に逃げ込むには、だいたい1Km、15分間かかる。昼間に一人、大通りを歩くのは見つかりやすく、とても怖い。裏道を通ったのではないか。教会には正面からでなく、横から入ったのではないか?」

 粟國は「アンジェロッティの目線ではどう写っていたのだろう?それを追体験してみた」という話を紹介。「実際にビデオを回しながら歩いてみた」という粟國の撮影した動画に園田がピアノで音楽をつける!というシミュレーションもなされ、会場は大いに沸いた。

 iClassicではこのレクチャーの数日後、園田がこの動画に音楽をつける様子を撮影する許可を得た。収録の様子と完成した動画をご紹介する。

粟國の収録した動画を見ながら音をつけていく園田

■NISSAY OPERA 2019『トスカ』
2019年11月9日(土)10日(日)13:30日生劇場
https://www.nissaytheatre.or.jp/schedule/tosca2019/

【キャスト】11月9日(土)/10日(日)
トスカ 砂川涼子/岡田昌子
カヴァラドッシ 工藤和真/藤田卓也
スカルピア 黒田博/須藤慎吾
アンジェロッティ デニス・ビシュニャ/妻屋秀和
堂守 晴雅彦/柴山昌宣
スポレッタ 工藤翔陽/澤原行正
シャッローネ 金子慧一/高橋洋介
看守 氷見健一郎(両日)

指揮:園田隆一郎
演出:粟國淳
管弦楽:読売日本交響楽団

合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
児童合唱:パピーコーラスクラブ

料金:S席:10,000円 A席:8,000円 B席:6,000円

【日生劇場】 03-3503-3111