武満徹メモリアルコンサート XVI   ピーター・ゼルキン ピアノ リサイタル


小澤征爾総監督率いるサイトウ・キネン・フェスティバル松本の名物企画のひとつ、武満徹メモリアルコンサートは、20世紀を代表する作曲家、武満徹が逝去した年から始まったコンサート。第16回を数える今年は、武満が生前、最も信頼し敬愛していた演奏家の一人、ピーター・ゼルキンによるピアノ・リサイタル。

ピーター・ゼルキンと武満徹の交友関係は1960年代にさかのぼる。1968年、小澤征爾指揮トロント交響楽団による《アステリズム》初演に触れ、圧倒的な感銘を受けたゼルキンが武満に熱烈な賛辞を贈ったことから始まり、武満はのちに7つの作品をゼルキンのために書いている。また、武満はゼルキンによる武満作品の録音にも立ち会い、そのいくつかは作曲家自身の監修によって録音されている。

今回演奏される武満作品は、ピーター・ゼルキンにとっても武満にとっても、とりわけ特別なものだ。
比較的初期に作曲されその後改訂を施し3部形式にした《遮られない休息》(1952-59)、すでに《ノヴェンバー・ステップス》で世界のタケミツとなり円熟期を迎えた時期に書かれた《フォー・アウェイ》(1973)、オディロン・ルドンの絵に触発され、恩師、瀧口修造の逝去に際し書かれた《閉じた眼 -瀧口修造の追憶に-》(1979)、《雨の樹素描》(1982)、そして、ピーター・ゼルキンに捧げられゼルキンにより初演された《閉じた眼 II》(1988)。
これらは、武満徹の逝去に際し、1996年、「心からの愛情と尊敬を込めて、私の親しい友人だった、武満徹氏の思い出に捧げます」とのコメントとともにリリースされた追悼盤CD『武満徹◆ピアノ作品集』に収録された作品から選ばれている。そのいずれもが、武満徹の遺したピアノ作品を代表するもの。

「音楽を聴くあらゆる人と、あらゆる音楽家のために(武満さんのピアノ曲は生き残る)、そう望みます。《フォー・アウェイ》・・・とても興味深く、喚起力があり、内容深い音楽です。バリの音楽に影響を受けていますよね。そして、《閉じた眼》、《閉じた眼 II》、《雨の樹素描》・・・これらは何度も演奏できますし、されるべきです」(〜CD『武満徹◆ピアノ作品集』特別インタビュー ゼルキン、武満徹を語る から)

年代を追って武満の創作の過程を辿ることにもなる絶妙なプログラミングは、『武満徹メモリアル』を冠するコンサートにふさわしい“個展”ともいうべきもの。
とりわけ、ペダルを駆使した超絶技巧が求められる武満のピアノ作品の“陰鬱な深淵”を描き切るゼルキンの、たった一夜限りの演奏会は貴重だ。そうした意味で、今回のメモリアルコンサートほどその意義を重く受け止めなければならない公演はないだろう。

後半には、ベートーヴェンの《ディアベリのワルツによる33の変奏曲ハ長調 作品120》。
主催者からゼルキンにははじめ、武満作品を中心に、近現代の作品でプログラムを作って欲しい、とお願いしたそうだが、彼はあえてベートーヴェンを組み合わせきた。なぜベートーヴェンなのか?
《ディアベリ変奏曲》は、J.S.バッハの《ゴルトベルク変奏曲》を意識して作曲されたとされるベートーヴェン晩年の作品。ベートーヴェンにとってもバッハが偉大な存在であったのと同じく、作曲前に必ずといって《マタイ受難曲》の一節を弾いてみるほど、武満の創作においてもバッハはとても重要な存在であった。そしてまた、武満が創作の過程で徐々に古い時代の音楽にさかのぼって行き、最初は小さな断片であった彼の作品がやがて大きな存在となっていったことと、ベートーヴェンの変奏曲を対比させたかったのではないか。

ともあれ、2003年の来日公演で《ディアベリ変奏曲》の名演を披露し「伝説」とも騒がれ、今年2月アメリカ・カリフォルニア州サンタバーバラで開かれたリサイタルでの演奏では「今世紀にサンタバーバラで開かれた最も印象的なリサイタルのひとつであり、これを凌ぐ公演には今後当分めぐり合えないだろう」と語られたように、名演が期待される。
(文:唯野正彦)

【公演日程】
2011年8月24日 (水) 19:15 開演
長野県松本文化会館 大ホール

【プログラム】
武満徹:《遮られない休息》
《フォー・アウェイ》
《閉じた眼 -瀧口修造の追憶に-》
《雨の樹素描》
《閉じた眼 II》
ベートーヴェン:《ディアベリのワルツによる33の変奏曲ハ長調 作品120》

◎お問い合わせ:サイトウ・キネン・フェスティバル松本 チケット・インフォメーション・ダイヤル
0570-063-050(受付時間10:00〜18:00/土日祝日営業)

◆チケット申込み
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*関連公演*
■ピーター・ゼルキン ピアノ・リサイタル
2011年8月31日 (水) 19:00 開演
東京オペラシティ コンサートホール

【プログラム(曲目が一部変更となりました)】
武満徹:《フォー・アウェイ》
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ベートーヴェン: ディアベッリの主題による33の変奏曲 op.120

主催:KAJIMOTO
◎お問合せ:カジモト・イープラス 0570-06-9960

◆チケット申込み
※下記WEBからもお申込みいただけます(外部サイトにリンクします)

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