スティーヴン・イッサーリス チェロ・リサイタル


スティーヴン・イッサーリスは、現代最高のチェリストのひとりであると同時に、極めて希有な存在でもある。多くの著名なソリストがコンクールを経て世に出るなか、それとは無縁のところから着々と実績を積み重ね、世界の第一線で活躍する奏者へと駆け上がってきた。また、学究肌でもあり、埋もれた作品の蘇演に熱意を燃やし、ひとりの作曲家に焦点をあて深く掘り下げるプロジェクトを企画するなど、独自の道を突き進む。

しかし、そうした彼の生き様以上に、もっとも個性的なところは、現代の金属弦(スティール弦)を用いず、羊の腸で作られた「ガット弦」を用いているところだ。比較的に音がよく飛ぶ銘器ストラディヴァリウスといえど、大きなコンサートホールや、オーケストラとの共演では音量的にガット弦は圧倒的に不利になる。それでもガット弦の使用にこだわり続けるのは、彼の音楽に対峙する姿勢が生み出すものだ。つまり、それが彼の追求する音楽を生み出すために無くてはならない、自然なことなのだ。


“ミスター・ガット弦”の異名をとるイッサーリスが愛器ストラディヴァリウス・フォイアマンで奏でる、美しくしなやかで繊細な音色、それが彼の最大の魅力と言ってもいいだろう。

だが、少しだけ残念なことがある。ヴァイオリンで有名なストラディヴァリウスだが、その希少性から、かなりの高額となり、世界的な奏者のほとんどが自己所有でなく「貸与」で使用しているのが現状だ。そのうえ、チェロとなるとヴァイオリンに比べて現存する楽器は、はるかに少ない。イッサーリスの使用するストラディヴァリウス・フォイアマンも、日本音楽財団からの貸与となっているが、今回の演奏会をもってその期限が終了となる。つまり、銘器「フォイアマン」と「ガット弦」によるイッサーリスの響きを耳にできる最後の演奏会となるのだ。

クラシック音楽は、ホールや演奏家、そこに集う聴衆、そのあらゆるものによって二度と同じものは生み出されない“一期一会の世界”だが、今回の演奏会はいつにも増してその感が強い。私たち聴衆だけでなく、演奏家ともども、貴重な一夜となるだろう。
(文:唯野正彦)

*1730年製チェロ「フォイアマン」 Feuermann
 アントニオ・ストラディヴァリが製作したといわれる約50挺のチェロのうち、1730年に製作された楽器。通常のチェロと比べ、楽器本体の部分の細長い形が特徴。世界的に著名なオーストリアのチェロの巨匠、エマニュエル・フォイアマン(1902-1942)が、1934年から演奏活動やレコーディングに使用したことから「フォイアマン」と呼ばれている。

【日程】 
2011年5月18日 (水) 19:00 開演  会場:紀尾井ホール

【出演】
チェロ : スティーヴン・イッサーリス
ピアノ : サム・ヘイウッド

【料金】
全席指定¥8,000

【プログラム】 
シューマン:幻想小曲集 op.73
ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 op.65
ユリウス・イッサーリス:バラード
ラヴェル:2つのヘブライの歌(イッサーリス編)
プーランク:チェロ・ソナタ

【問】
カジモト・イープラス TEL:0570-06-9960  http://kajimotoeplus.com/

◆チケット申込み
※WEBからお申込みいただけます(外部サイトにリンクします)

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