【速報】リッカルド・シャイー 記者懇談会から(後半)

3/4,5サントリーホールでのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団日本公演を前に、3月3日(木)記者懇談会が開催された。
そのなかから、主な発言をピックアップした。

【出席者】
・リッカルド・シャイー (ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 第19代カペルマイスター)
・アンドレアス・シュルツ (ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 事務局長)
・梶本眞秀 (KAJIMOTO 代表取締役社長)

2011年3月3日(木)ホテル西洋銀座にて

〜(承前)〜

●ガーシュウィンの新譜について


リッカルド・シャイー:
 今回の新譜『ガーシュウィン;ラプソディ・イン・ブルー、他』(ユニバーサル DECCA UCCD-1287)。
なぜジャズのピアニストとのガーシュウィン? なぜガーシュウィンをゲヴァントハウスで? と思われるかもしれません。しかしながら、私たちは、これまでも定期的にガーシュウィンを取り上げてきています。オペラも取り上げましたし、ある意味、ガーシュウィンの独特のスタイルをとても熟知しています。「スウィングする心」をよくわかっているオーケストラでもあるのです。

 すでに、イタリアではゴールデン・ディスク賞を受賞していますし、成功を嬉しく思っています。《ラプソディ・イン・ブルー》では、ジャズ・ピアニストのステファノ・ボラーニの卓越した演奏、個性、そして何よりもオーケストラ自身が、すばらしい演奏にしたいと思うその意欲、特にクラリネットのアップビートのところを聴いていただくと分かると思うのですが、スタイリッシュなサウンドになっています。

 ガーシュウィンの演奏には、ややもするとジャズを意識し崩しすぎる、エキセントリックになりすぎるところがあるのですが、私はそういう演奏を好みません。そして、ボラーニ自身も同じ意見だったのです。つまり、彼も私も、楽譜に忠実にまっすぐな演奏をすることを目指し、それを望んだのです。
 《キャットフィッシュ・ロウ》についても、オーケストラはすばらしい柔軟性と個性を発揮し演奏しましたが、ジャズだからなんでもあり、というのでなく、「超えてはいけない線」というものを熟知した上での演奏でした。
 
●音楽の柔軟性とは?

Photo:M.Terashi / iCLASSIC

リッカルド・シャイー:
 クラシックから20世紀までの幅広いレパートリーの音楽を演奏することは、私自身、偉大なオーケストラの懐の深さを証明したいとの思いがあってのことです。偉大なオーケストラとは、そうしたキャパシティの広さをもったものなのです。「サウンド・アイデンティティ」と彼らは言いますが、音の個性、自己証明をするような音の個性を持ちつつも柔軟性をもつ。柔軟性というと、何か変わればいいと勘違いされる方が多いかもしれませんが、そうではなく、しっかりとした自己を持っているかどうかが重要なのです。幅広い知識を持ち、奏でる技術をもっている、多種多彩な色をもちながらも、自らの色、文化を維持し保っているのです。
 
 このオーケストラは、オペラの伴奏もしています。オペラは息継ぎ、フレージングなど、風のごとく、その時々で状況が変わります。それに臨機応変に対応していける。オペラハウス出身のオーケストラに最高のオーケストラと言われるオーケストラが多いのは、そのような柔軟性ゆえではないかと思いますが、ゲヴァントハウス管弦楽団もまたしかりです。
 
●これからの録音予定について

リッカルド・シャイー:
 2013年にヴェルディ《レクイエム》を予定していますが、この作品は優秀な歌手がそろわないとなかなか難しい。歌手がそろえば、2013年には実現できると考えています。
 
 バッハについては、DECCAとバッハ・プロジェクトとして進行中ですが、イランの若手ピアニスト、ラミン・バーラミを招いての5つの協奏曲を予定しています。彼はバッハしか演奏しないピアニストなのですが、彼の演奏を聴くと、豊かなインスピレーションをもつことが分かります。彼のゴールドベルク変奏曲やフランス組曲は特筆すべきもので、とても魅せられました。そのほか、ミサ曲なども予定しています。

 バッハの演奏については、これまでピリオド奏法などつぶさに見てきましたが、私たちにとって新しい演奏を模索する「機は熟した」と考えています。ゲヴァントハウス管弦楽団は、現代楽器を用いた最古のオーケストラです。ピアノは現代楽器であるスタインウェイを用います。つまり、ロマンティックな演奏でもない、ピリオド奏法でもない、だからといって現代の楽器を使うことが足枷となるのではない、新たな「第三の道」です。

●マーラー・フェスティヴァルについて

アンドレアス・シュルツ:
 今年、5/17〜29、ニューヨーク・フィル、ロンドン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響といった世界の名だたるオーケストラがライプツィヒに集います。マーラーは二年半に渡りライプツィヒに居を構え、多くの作品の作曲にこの時期を費やし、また、ワーグナーのオペラを上演したりと、関係性が深い作曲家です。そのことをふまえ、3年ほど前にマエストロとこの企画を決めました。2日間に渡るシンポジウムも開催され、英語とドイツ語による本も出版される予定です。
 また、このフェスティヴァルは、ARTE(独仏共同出資のテレビ局ARTEの無料映像配信サイト)を通じて、ストリーミング放送を予定していますので、日本のみなさんも日本に居ながらにしてご覧いただけるものと思います。

●レヴァインの後継としてボストン交響楽団の音楽監督候補に名前が挙がっているが・・・

リッカルド・シャイー:
 今の私をみていただくと分かると思うのですが、今の、そして未来の時間、エネルギー、そのすべてが、ゲヴァントハウス管弦楽団に向いているということをご承知ください。

●次回の日本公演について

梶本眞秀:
 シャイーさんは、ここまで作品や作曲家に対して非常に明確な考えをもっていらっしゃる。それを、今回のようなたった二日間の演奏会ではなかなかお見せすることができない。次回は、もっと長い時間をつかって、シャイーさんの、そして、ゲヴァントハウス管弦楽団のもっている哲学のようなものが伝わる方法はないか、何をすればいいか、模索しているところです。

リッカルド・シャイー:
 梶本さんからもお話があったように、次回の日本公演について、2014年3月に2週間におよぶ滞在がいま検討されているところです。そのなかで、どういった充実した特別なものにするか、単なる客演ではなく、ゲヴァントハウス管弦楽団の全容をみていただけるにはどうすればいいか、みなさんの率直なご意見、ご提案を伺えれば、私自身嬉しく思います。

(*この件について記者からは「バッハの声楽曲のプロジェクト」「《トゥーランドット》のベリオ補作完成版のコンサート形式上演」などの意見が出たが、みなさんはどうお考えになるだろうか? 「聴衆が一緒になって創る」という考えにたち、招聘元のKAJIMOTOへ提案するのもいいのではないだろうか)

前半を読む>>

【参考】ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 日本公演の詳細はこちら

  3 comments for “【速報】リッカルド・シャイー 記者懇談会から(後半)

  1. ゲヴァントハウス好き
    2011/03/15 at 09:25

    —————————————
    この記事の表記ミスの【訂正】をお願いします。
    —————————————

    【速報】リッカルド・シャイー 記者懇談会から(後半)

    ARTE(フランスのテレビ局ARTEの無料映像配信サイト)を通じて、ストリーミング放送、、、、、ですが、

    「ARTE(独仏共同出資のテレビ局ARTEの無料映像配信サイト)」が正しいようです。

    <下記参照>
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%86

    ドイツ語・フランス語の二か国語の放送で、より多くの国々をカバーする目的で作られた会社です。

    「フランスのテレビ局ARTE」と表記すると、事実と反するばかりか、「何で、ドイツの放送局がやらないんだ」と、かなりの誤解をうみます。

    ネット上の情報は、正確でなく、そのままあてに出来ないのが多いのは事実ですが、貴社の立場で、そのようなことでは困ります。

  2. iCLASSIC編集部
    2011/03/15 at 11:30

    ご指摘ありがとうございました。修正いたしました。

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