東京二期会オペラ劇場《サロメ》アフタートーク採録

■質問1 7つのヴェールの踊りで少女が出てくるシーンの意味は?

23,26出演組GP(2/21撮影)から Photo:M.Terashi

■コンヴィチュニー あれはもう一人のサロメ、あるいは、子供のサロメなのかもしれません。しかし、それは、子供の頃のサロメではなく、これから先の未来のサロメではないのかなと思います。あの場面、「7つのヴェールの踊り」の音楽に目を向けると、ゲネラルパウゼ(全休符)があるんですね。それまで音楽はどんどん盛り上がりをみせて、高揚しカタストロフィーに向かっていく激しい音楽です。なんとか閉塞した世界から出ようと皆もがくのですが、結局みんな殺し合ってしまいます。その先にある唯一「生」という、生きるということを継続できるのは、子供たちだと思っています。

 実際的なことを言うと、あそこでいったんサロメの踊りは終わるんですね、でも、その先まだ音楽は続く、そこでどうやってつなげていけばいいのか、どうやって終わらせるかと考えたとき、少女が出てきて目隠し遊びみたいにして、クルクル回って終わり、という形にしたわけです。でも、あの子供が象徴しているのは、「希望の一筋の光」なのかもしれません。目に見えるものだけじゃなく、目に見えないものを信じるという気持ちをもちたいと思っています。

■質問2 「7つのヴェールの踊り」について。コンヴィチュニーさんの意識するサロメ像とは? 一度死んだサロメが生き返ったり、首を切られたヨカナーンが首と一緒に出てきたりと、シュールな世界だが、そのイメージについて。

GP2日目から、大隅智佳子(サロメ)、友清崇(ヨカナーン) Photo:M.Terashi

■コンヴィチュニー これまで何度もサロメを見てきましたが、そのどれも、「7つのヴェールの踊り」は見ていて恥ずかしくなるものでした。その体験から、違う形で表現しようと、そう思ったのが出発点です。覗き見主義的なものにはしたくない。音楽はすごく長いので、じゃあそこで何ができるか、可能性を探る所から始まりました。

 すぐにこのアイデアが生まれたわけでなく、何度もチームで話し合いを重ねて来たなかで出てきたもので、ここに出てくる登場人物が、みな絶望感を感じていて、閉じられた制度からとにかく出たいんだ!ということを表現すること、それが私にとって重要なことでした。制度的な象徴となっているヘロデでさえも一人の人間としてそこから出たいと思っている。徹底してネガティブな人物像としてヘロデを描くことはしたくなかったのです。ヘロデも人間でありたいと思うことのできる権利を与えてあげたいと思いました。

 リアルな要素とシュールなアプローチについてですが、音楽劇には両方を行き来できる可能性があると思っています。だからこそ、それをやりたいと思うのです。
 
 ブレヒトが言っています。舞台というのは、現実のなかにその素材を見いだすのだと。しかし、現実を写すだけでなく、現実以上のものを見せる、それこそが舞台だと。そのことがこの舞台につながっています。

■質問3 質問ではないのですが・・・・
「感動しました。絶望の劇ではなく、希望の劇でした! ほんとうに希望の劇にしてくれてありがとうございました」

 

アフタートークを終え、満面の笑みをうかべる、P.コンヴィチュニー(演出家)と多田羅迪夫(《サロメ》公演監督)  写真提供:東京二期会

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